
概要
本オブジェクトは、蛸のような触手を持つ人型実体です。
20██年██月██日に、ニューベイズ東部にある旧海底炭鉱付近の海域にて発見されました。
触手は腰部から生えており、手足のごとく自在に動かせるほか、ある程度の伸縮も可能です。
それ以外の身体構造は人間に類似していますが、その姿を見続けた者は徐々に精神異常を発症します。したがって【O-10985】には全身を覆える衣服を着用させ、職員は対面する際にミーム防護措置を行ってください。
【O-10985】は未知の言語体系を有していますが、加えて高度な言語学習能力も備えていると推測され、収容時点で既に人間の言語での会話が可能でした。以下は人間の言語で行われたインタビューの記録です。

インタビュー記録
機関職員:
それではインタビューを始めます。 まずはあなたの名前を教えてくれますか?
O-10985:
われワレに、なまエはナイ。
機関職員:
それでは暫定的に「O-10985」と呼びます。
今「我々」と言いましたが、他にも仲間がいるのですか?
O-10985:
われワレ“いずら”ヨり生マれしモノ、にんゲンよリ昔から“おこそにむ”のミヤコに暮らス。
機関職員:
……まだ聞き慣れない言葉がありますね。
“いずら”や“おこそにむ”について教えてくれますか。
O-10985:
“いずら"……われワレを創りしモノ。“おこそにむ”の支配者であル。
“おこそにむ”……海ノ深きところ……光ナきところ。
機関職員:
なるほど。つまりあなた方は、人間が生まれるより以前から深海の都に暮らしてきたということですね。
ではなぜ、最近になって表に現れるようになったのでしょうか。
O-10985:
にんゲンを知ルため。
にんゲンは、われワレに大いなル知識ヲもたらしタ。
ゆえニ、さらなる知識ヲ求め、にんゲンのミヤコを調べていル。
機関職員:
過去にも人間との交流があったということですか?
O-10985:
然リ。にんゲンの言葉モ、そノ時ニ得タ。
われワレは“おこそにむ”の知識ヲ、にんゲンはにんゲンの知識ヲ、与エあっタ。
機関職員:
その交流が行われたのはいつですか?
O-10985:
われワレの感覚でハ、つい最近……おそらク20年ほど前。
ぁどのむ……ぃあやは……あひことぅ……。
補遺
補遺1:
機関のデータベース上に、【O-10985】と同種の異常存在との交流を行った記録はありません。
インタビューで言及された交流は、外部の要注意団体によるものと推測されます。
補遺2:
【O-10985】が用いる独自言語体系の解読が進められており、文法的には日本語に近いと推測されています。
補遺3:
【O-10985】を直視しつづけて精神疾患を発生させた者は、いずれも「深海に強大な何かが存在している」という妄想を抱き、「人間社会は矮小で、いつ消滅してもおかしくない」という趣旨の言動を繰り返すようになります。
